木造迷宮


木造迷宮 (リュウコミックス) (リュウコミックス) 木造迷宮2 (リュウコミックス) (リュウコミックス)


とくめーはよく、アレをするなコレはダメだというような話をします(自覚はあるのです)。鬱展開いらね、昼ドラ展開ふざけんな。異能バトルもいい加減飽きない? 中二病設定の大盤振る舞いも卒業しようよ……。
なあんてことを守っていると、お話など書けなくなってしまいそうな気がしますよね。いやいや、実はそうでもないのです。THE 虎舞竜の『ロード』にもあるように、なんでもないようなことが幸せだったりするのです。もっとも模範的な例を挙げるなら『よつばと!』でしょう。翻訳家のとーちゃんと、自由奔放なよつばと、暖かな街の人々のなんでもない日々。既にそのなんでもない日々は日本から失われたもののような気がするのですが――
今回紹介する『木造迷宮』もそんな話。『よつばと!』が「よつばのいる日々」なら、『木造迷宮』は「ヤイさんのいる日々」。昭和の匂い漂う木造家屋二階建て。家主(と言えるのかなぁ)ダンナさんこと柴谷広一は、元教師の売れない小説家。“女中”のヤイさんと二人暮らし。
とくめーが薦めてるからにはお色気モノかと思いきや、始めの頃こそ肩車(生足なまあし)なんてこともあったけど、直接的なエロティシズムはどんどん抑制されていって、互いに意識はしているものの、おまえら中学生かっていう健全な間柄。ダンナさんはヨレヨレでダメダメな「大正文士のなれの果て」だし、ヤイさんは「昭和のNHKの連ドラヒロイン」。楚々として、働き者で、笑顔が素敵な割烹着の美人さんと、昼寝したり、散歩したり、犬を飼ったりするなんでもない日々。手を繋いだら二人して顔真っ赤(笑)。
トーンをあまり使わず定規で影を引いたり墨ベタを多用したりする“白黒なのにセピア色っぽい画風”そのまんまの、昭和な日々がエンドレス。ダンナさんの妹で眼鏡のキャリアウーマンのサエコさん、眼鏡っこ文学少女セツコちゃんなんて新キャラが出てきても、それでなにか奇抜な新展開があるかっつーとありはしない。せいぜい、ヤイさんがメイド服を着てみたり髪留めをつけてみたりするくらい。
割烹着の似合う女中さんのいる昭和の日々がただただ描写されているだけ。いちじかんしあわせ、保証します。


しかし、読み終わって冷静になると、平成の御世はほんと味気ないですな。
「既に失われた日々の話」であることが『よつばと!』以上に露骨であるがゆえになおさら。こうしてとくめーは懐古と現実逃避の想いを強めていくのです。